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大分県を代表する洋菓子店
「おかしのHADA」が
2017年10月、リニューアルを行った。
代表作であるシュークリームを筆頭に、
多くのファンを持つ人気店が
なぜ今変化を求めたのか。
そこにはどのような背景があったのか。
常に時代の先を見つめ動く、
オーナーシェフ・羽田吉克の本音に迫った。
昭和23年創業。「羽田製菓」の名前でスタートした和菓子屋が、祖父、父そして息子へと受け継がれ「おかしのHADA」へと姿を変えた。三代目のオーナーとなる羽田吉克さんは和菓子屋の息子であることから、幼い頃から洋菓子への憧れが強く、小学校の卒業文集には「ケーキ屋さんになりたい」と将来の夢を綴っていた。
その夢を実現させるため、高校卒業後は辻製菓専門学校へ入学。その後も福岡県の洋菓子店で4年間修行を重ね地元に戻ると、父が営む和菓子店に洋菓子を置き販売を始めた。翌年には1度目のリニューアルを決行。のちに代表作となる「びっくりシュー」を筆頭に人気を集め、その名を広めると2003年には店舗を建て替え、洋菓子店としての本格的なスタートを切った。シュークリームは店の代名詞となるほどに知名度も上がり、順調に歩みながらも今年10月、3度目のリニューアルを決断。「時代の流れが速すぎて、何もしなかったら5年先が見えないと突然思ったんです。今は、全体的にケーキ屋で働く人も減っていて、会社の中身や体質的な部分を変えないとやっていけないと感じて、変えるなら今だと。」
ここ数年の間に近隣にはコンビニエンスストアも建ち、変わりゆく環境の変化を感じる日々。「同じ事を繰り返していては何も変わらない。」と、時代の変化の中でオーナーは今回のリニューアルに踏み切ったが、それはいわゆるただの“改装”ではない。代々受け継いだこの店が、少しでも長く愛されるための大きな挑戦だった。「サービス業の人員減少にある今、それに対応できる会社でなければいけないと思いました。今までのようにケーキだけを売るのではなく、関東や関西の洋菓子店のように、ちゃんと計画生産できるものを売って利益を上げなければ先は見えません。そのために会社の「核」となるものが必要でした。」
ただお店がキレイになるだけではお客様には喜んでもらえないー。オーナーは、その「核」となるHADAの新たな看板商品を模索した。試行錯誤のうえに誕生したのが「TOKIBAUM」という名のバウムクーヘンだ。店舗改装中の間、全国を巡りバウムクーヘンを食べ続け研究を重ねた。「バウムクーヘンは誰もが知るお菓子だけど、結婚式でもらう硬いお菓子という印象が強いはず。その概念を覆せればと思っています。」
オーナーが満を持して作り上げた「TOKIBAUM」は、ソフトとハードの2種類。高齢者の方から小さなお子様まで楽しんでもらえるソフトと、オーナーの言葉を借りるなら中はネチッと、外側はカリッとした食感がクセになるハード。発酵バターをふんだんに効かせ、今まで味わった事のない美味しさに誰もが驚かされるだろう。お菓子屋に生まれ育ったオーナーに変化球は不要だ。シンプルに、真っ直ぐにその美味しさを追求したこの商品には、たくさんの愛情と、この道ひと筋で磨かれた技が込められている。“シュークリームのHADA”が、“バウムクーヘンのHADA”となる日は、そう遠くはないだろう。
何事にもシンプルに、基本に忠実に取り組むことをモットーとするオーナーが、一番大切にしている事は「(商品が)なるべく新しい状態でお客様の手に渡ること」だという。そのため、お店の中には沢山の決まり事がある。ショーケースには多く商品を並べず、売れた分だけ補充するなど、温度管理など含めた商品管理は徹底して行う。
それも“出来立てに勝るものはない”というオーナーのこだわりのひとつだが、実は無類の寿司好きで、全国の寿司を食べ歩き自らを「寿司マニア」と呼ぶほど。しかしそれは単純に寿司だけを楽しむだけではなく、そこにも会社の代表としての大きな学びを見出している。
「寿司は目の前で握って、目の前で食べてもらう一番ごまかしのきかない料理だと思います。逆に私たちはケースに商品を並べて、お客様を待つ商売。手を抜こうと思えば抜けてしまう怖さがあります。こんな時代だからこそ寿司屋のように、あなたのために作りましたという“専門店感”が必要だと感じています。お菓子屋も専門店である以上、そうありたいですね。」
今回のリニューアルでは販売面積を2/3に縮小した。普通ならより大きく改装するのではないかと問うと、「今のケーキ屋は、昔のスーパーみたいに何でも売っている所が多い。でも、“何でもあるは、何にもない”と思っていて、そこに専門店感はありません。選択肢の多い店より、これだけを買いに行くという所を目指したいです。」今は買いづらいものに価値のあるとされる時代。寿司屋に学ぶ専門店感が、今回のリニューアルにも大きく活かされている。
たくさんの人との出会い、そして様々なタイミングが重なり新たな店舗となった「おかしのHADA」。そこには、長くこの道を歩んできた人間だからこそ出来た決断力と直感力があった。また、雇用問題も多く抱えるサービス業の中で、その壁に立ち向かうための会社づくりに先手を打った。
なぜ今リニューアルするのかと疑問視する人も多くいたというが、「お店を始めた当初も、田畑しかないこの場所で商売ができるのかと心配する人ばかり。反対もされました。でも自分には特殊なことをしているつもりはありません。好きな事を与えられた場所で一生懸命やって今がある。自分にとって、それがケーキ屋だったんですね。」
常に、5年後、10年後を考え動いてきたオーナーの言葉に迷いはない。「従業員や家族のため、使命感を持ち頑張るだけです。」後悔のない人生を歩むため、置かれた場所で一生懸命に生きる姿は多くの人の心をも動かす。「おかしのHADA」に関わるすべての人のために、オーナーシェフ・羽田吉克は今日も明日を見つめている。
1969年10月5日生まれ。大分県豊後大野市出身。 高校卒業後、辻製菓専門学校へ入学。卒業後は福岡県の洋菓子店で4年間の修行を重ね、平成4年地元へ。父の営む和菓子屋に立ち、平成15年には自らがオーナーシェフとなり、「おかしのHADA」として本格的な洋菓子店のスタートを切る。
大分県豊後大野市三重町百枝1086-82
TEL:0974-22-1559
OPEN / 10:00 - 18:00
DAY OFF /毎週火曜日(月2回月曜日定休)